電子カルテに関するアンケート

集計報告


 この度は「電子カルテに関するアンケート」にご協力をいただき、まことにありがとうございました。最終的に157名の方々からご回答を頂きました。分析結果 は2000年11月に開催された医療情報学連合大会で発表されました。また、2001年5月に開催される第102回日本耳鼻咽喉科学会でも発表致します。ホームページでも事務局よりのご回答のお礼を兼ねて集計報告をさせていただきます。

事務局代表:阿部和也(庶務会計担当幹事、都立府中病院)
発表者代表:坂部長正(幹事、鈴鹿医療科学大学)
耳鼻咽喉科情報処理研究会 幹事・監事 一同


報 告

結 果

回答総数:157名。回答率:38.5%。

表1. 回答者の構成

年齢
30歳以下
1
%
31-40歳
31
 
41-50歳
45
 
51歳以上
23
 
無回答
0
 
勤務形態
国公立大病院
25
%
私立大病院
11
 
国公立病院
17
 
私立病院
11
 
診療所
33
 
その他
1
 
無回答
2
 
コンピュータ利用
大いに
61
%
適当に
35
 
あまり
3
 
無回答
1
 

 年齢構成は、41-50歳が最も多く、次いで31-40歳であり、30歳以下が少ないのが目立つ。勤務形態は、診療所が最も多く、次いで国公立大病院である。コンピュータの利用状況は、ほぼ全員が利用している。

表2. システム利用の現状(複数回答可、%)

窓口・レセプト
69
% 文献検索
54
%
検査結果参照
48
  処方歴参照
45
 
オーダリング 39   臨床研究 30  
病名検索
27
  紹介状作成
23
 
特殊外来DB 17   手術記録DB 16  
入院要約作成 12   その他 11  
無回答
1
       

 現在、診療にコンピュータを利用しているかという設問には、多い順序に窓口レセプト、文献検索検査・処方歴参照、オーダシステム、臨床研究であり、最も少ないのが入院要約であった。レセプトとオーダシステム関連の利用が非常に高いことが分かる。

表3. 電子カルテを導入したいか

  一般外来 特殊外来 入院
早急に導入
6
10
4
時期を見て
34
32
25
メリット部分のみ
43
32
31
考えていない
12
8
12
わからない
4
15
21
その他
1
0
0
無回答
1
3
7

 電子カルテを導入したいかという設問には、一般外来・特殊外来・入院のいずれも「メリットのある部分のみ」「時期を見て」が非常に多く、かなり消極的であることが見て取れる。

表4. 電子カルテ導入で予想されるメリット・デメリット(複数回答可、%)

メリットの理由(複数回答可、%)
能率向上
48
%
会計処理との連動
44
 
ペーパーレス
36
 
クラーク入力
8
 
経費は仕方ない
6
 
職員削減
6
 
その他
17
 
無回答 17  
デメリット(複数回答可、%)
能率が悪い
57
%
図での記載が多い
56
 
パターン化が難しい
46
 
季節変動が多い
42
 
アナログデータがある
36
 
情報が脱落
29
 
開発費が高い
29
 
疾患が多岐
29
 
改竄防止など不十分
23
 
急性疾患が多い
18
 
その他
8
 
無回答 11  

 電子カルテ導入したとして、現時点で予想されるメリット・デメリットの調査では、メリットよりもデメリットの項目が圧倒的に多いことが分かる。メリットの中では、「レセコン・オーダシステムとの連動」「能率向上」「ペーパーレス」が極端に多く、デメリットでは、「能率が悪くなる」「所見や手術記録に図を多く使う」「問診・所見・治療のテンプレート化困難」「患者数の季節変動が多く入力時間がない」が半数を占め、次いで「アナログデータが多い」「高価で費用対効果が悪い」「詳細な入力が出来ず診断上重要な事項の脱落が起こる」「取り扱う疾患が多岐にわたる」「改竄防止が不十分」等であった。なお、メリットの中で、「職員削減」に対して「職員削減にならない」、「クラーク入力」に対して「違法である」の指摘があった。能率に対して、メリットありが半数近く居るのに、デメリットと考える人も6割近く居るのが興味深い。

表5. 特殊外来への導入(%)

難聴外来 40 % アレルギー外来 36 %
補聴器外来
31
  めまい外来
27
 
腫瘍外来 22   中耳炎外来 19  
音声外来 17   顔面神経外来 15  
その他
8
  無回答
27
 

 耳鼻科特殊外来への導入希望は、難聴、補聴器、めまいなど、データ(特に数値)の蓄積を重視する外来が挙げられている。アレルギー外来は、テンプレートが使いやすいと考えて高い支持が得られたものと考える。

表6. 電子カルテ導入の順序(%)

項目 1位 2位 最下位 記入なし
医事病名
67
2
0
28
病歴データベース
62
18
0
17
検査歴、処方歴
32
24
4
25
看護記録
16
19
9
32
レントゲン画像
31
20
7
20
病理画像
18
19
9
32
入院要約
31
24
5
25
紹介状
31
19
8
25
手術記録
19
19
8
31
描画
17
14
13
25
アナログ情報
22
18
12
18
静止画像
32
17
10
19
動画
15
11
28
27
特殊外来
13
15
20
31
入院カルテ
12
9
29
33
一般外来
18
10
29
28
その他
3
1
1
95

 入力装置が改善されて厚生省の3条件が満足するようになった場合、診療に関わる項目(17項目)について電子化希望順位を尋ねたところ、導入したいものとして医事病名、病歴データベースが半数を超え、次いで静止画像、レントゲン画像、紹介状、入院要約の順であった。一方、動画、入院・一般外来カルテは最下位をつけた人と順位を付けなかった人を併せると6割を超え、不要又は実現困難と考えている人が多いことが分かった。

考 察

 耳鼻科情報処理研究会会員に対して、カルテの電子化についての賛否とその理由をアンケートで調査した。
 厚生省の3条件を満足し、耳鼻科のように内科と外科の両方の性格を備えた特殊な診療科では、多忙な季節変動が多い外来や医師数の少ない病棟で簡単に安くカルテ内容を入出力することは困難と想像され、電子カルテの導入には当面否定的な意見が大勢を占める結果となった。
 カルテの電子化のような大規模システムの構築は、その技術的研究や開発に力を注がねばならぬのは勿論であるが、同時にシステム導入の論理的手順(全診療科の手書きカルテ内容の精査−問題点の抽出−電子化への解決法の策定−試行)に従い綿密に気配りをしながら計画を進めねばならず、このどれが欠けても成功しない。また、平行して手書き・電子カルテの定義と範囲の策定、用語の統一やカルテ構成に関わる各学会や組織内・間のコンセンサス、俗にいうコンピュータアレルギーの解決対策も講じなければならぬ。幸い、オーダシステムはかなり普及し、電子カルテも診療所を中心として一部の病院でも導入され始めている。日本医療情報学会がリーダーシップを発揮して、今、事に当たるべき時と考える。
 なお、今回のわれわれの報告したアンケート結果は、カルテの電子化そのものへの批判ではなく、将来はカルテの電子化は当然必要であることを基本概念としていることを付け加えておく。

まとめ

 耳鼻咽喉科情報処理研究会会員約400名に対して、電子カルテの導入の是非とその意見をアンケート形式で収集した。その結果、内科系と外科系の両方の性格を持った耳鼻科で使用する外来・入院カルテの電子化は、診療面、技術面でも現時点では対応困難であり消極的意見が多くを占めた。