電子カルテ論争


改訂:1999年12月27日(前回改訂:1999年11月6日)

1998年2月7日に東京で開催された第14回耳鼻咽喉科情報処理研究会以来、耳鼻咽喉科領域への電子カルテの導入が大きな話題になり、活発な意見交換が電子カルテ研究会のメーリングリスト SeaGaia-ML 上で行なわれています。このページには SeaGaia-ML の引用を始めとして関連する情報を集めてあります。



現在までの論議UPDATED!
研究会に寄せられた意見、報告、論文やSeagaia-ML上の関連するメールなどを、新しいものから順に掲載してあります。


以下に、研究会終了直後に交されたメールを時間を追って集録してあります。


経緯

第14回耳鼻咽喉科情報処理研究会で、南陽市立総合病院の川合正和先生が「キーボードを用いた外来診療録全文電子化の試み」という演題を発表したところ、フロアから非常に強い反応がありました。今回の研究会で最も話題となった演題の1つでした。
その後、坂部幹事が研究会の見聞録として、個人的に複数の医療関係者に経緯を配布したところ、かなりの反響があり、坂部幹事を中心にしてメールでの意見交換・論争がありました。研究会として、この論議は非常に重要なものと考え、研究会のホームページに「トピックス」として掲載することとなりました。

以下のメールは、坂部の元に届けられたものを、各発信者からの公開許可を得た上で阿部に転送し、阿部がレイアウトを含むHTML化を行なったものです。HTML化の段階では本文の修正は一切行なっていません(署名部分の住所や電話番号などの削除は行なっています)。

ご意見ご感想は坂部長正もしくは阿部和也までお送りください。また、その節はメールの公開の可否を併せてお知らせください。

以下のメールに表明されている意見は、メールの発信者各個人の意見であり、耳鼻咽喉科情報処理研究会を代表するものではありません。

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Date: Tue, 10 Feb 1998 22:21:26 +0900
From: "kawai masakazu"<kawaidr@jan.ne.jp>
To: "坂部 長正"<PEC01137@niftyserve.or.jp>

 先日の耳鼻咽喉科情報処理研究会では過分のご評価を頂ありがとうございました。 リアルタイムで電子カルテ化に向き合わされている人間として、話たいことは山ほど ございます。伝統あるシーガイアミーティングに出していただけるなど、夢のようで す。是非出席させていただきます。
 私の考えとしては、カルテの枝葉の部分であれば電子化により利益を得る部門も多 いと考えるのですが、根幹である診療録をキーボード入力でやったりしたら、利益どこ ろか医療が潰れると思っています。キーボード以外の入力方式も全部検討しましたが、 予備実験の段階で使えないことが判っています。その辺のところをまとめてもう一本 ビデオを創ってシーガイアミーティングに持っていきたいと思います。  ちなみに私は一応ながら電子カルテ推進派です。現実志向型電子カルテ推進派(現 実派)として理想追求型電子カルテ推進派(理想派)との協調の道を探っていきたい と思います。ただし、空想と現実を混同する夢想派だけは吹き飛ばしたいと思います。  メーリングリストに尽きましては医療情報学会には登録しておりましたが、耳鼻咽 喉科情報処理研究会には登録していませんでした。登録の程お願い申しあげます。
追伸 私の場合ですが、パソコンが上達するのに比例して名簿作りなどの雑用が増 えてきたような気がします。先生にもそのような傾向があられるのではとご洞察申し 上げます。
 
  川合正和

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川合先生
過日の先生のレポートを小生のMLにアップしたらかなりの反応があります。 特にこの大橋先生は電子カルテ研究会の推進役でもあり私のMLに特別登録してあるの で重要なご意見として本人の許可を得て先生に転送します。 お二人で討論して結果を私宛に教えて頂ければMLにアップします。 大橋先生は東京品川でギネを開業し、10年ほど前からMACを使って自宅と診療所に ネットを張り、電子カルテを自己開発した人です。非常に熱心な方であちこちで講演や キャンペーンを展開していて最近は日経メヂカルにも出ていました. ただ、外来1日30人くらいだそうで、入力する時間が充分ある.この先生が一人で操 作し(看護婦も)システムの操作性など第3者の評価がないなどの陰の声もあります。だい たい電子カルテ研究家の推進者はみなこのレベルのコンピュータマニアであって、狭い 診療フィ−ルドの人たちばかりです。例えば歯科の人が熱心ですが、先生もご存じのよ うに歯科は診療の時にレセプトが出来てしまうくらいカルテ自体が簡単です。昨年あた りから入力が重要と思ったらしく、テンプレート化の方向に急速に進み始めましたが、 特別な狭い診療部門(糖尿、腎透析,染色体異常など)のカルテ電子化が多く、これがすべての診療科に適合するとは到底思 えません。また、テンプレート化には必ず用語の統一が必要ですがこの点は研究会では 全く議論していません。学会の用語委員会はどこも老害がひどくて耳鼻科学会でも 簡単に電子カルテ用用語統一など認められないと思います。私がこの件で発言したこと がありますが全く無視されました。
下の方に私のコメントがありますが、特殊な場合を除きカルテそのものに対する医師の認識 が薄いのに電子カルテのために万難を排して入力するでしょうか? 勝手な私見はともかく、十分にお二人で議論されることを期待します。 先生のレポートは電子カルテ研究会のMLには転送していませんので気楽にお願いします。
以上 坂部長正

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大橋です
電子カルテ開発を初めて13年ほどになりますが、その間に、私 が試行錯誤の中から実感してきたことを、科学的に実証されてお り、大変面白くよませて頂きました。ここに述べられたことは、私 の9年間の臨床運用による結論とまったく合致するもので、殆どは 念押しになりますが、少しコメントさせてください、、、

Sun, 01 Mar 1998, 坂部 長正 wrote:
>キーボードを用いた外来診療録全文電子化の試み 南陽市立総合病院耳鼻咽喉科  川合正和、伊藤吏
..
>ること、平成 12年に実用段階にあることが必須条件と考えら れ、キーボード入力によるワードプロセッサー方式(以下ワープ ロ方式)が最有力候補と考えられた。

私も基本的には電子カルテはワープロの延長として考えることが もっとも早道と考えましたが、ワープロそのものを使うという発想 は大胆ですね(私は、当初から外来診療においては実用的ではない と考えていましたので)。

>いたいとそのまま書く書き方)に変化した。棒書きするように なった結果、高速のタイピングが可能となったが、瞬間瞬間の医 学的判断が欠落するため、思考は浅くなり医師と患者の会話とし ては底の浅いものに変化した。
..
>見直した例など、臨床医としての総合的な勘が入力中は働かなく なった。
..
>看護スタッフが医師の代理として患者を仕切るような動きが見ら れました。日常の医師の力量を知る看護婦からは、明らかに診療 レベルが落ちてると言われた。

その通りと思います。患者さんと対面しながらキーボードを打つ ことは、私は当初からやっていません。理由は「患者さんとのコ ミュニケーションが切れる」からです。問診の際は、従来通り目の 前に紙のカルテ(本当はメモ用紙でもよい)を置いて、メモしなが ら話をします(何もないと間が持てないということもある)。
で、入力はいつするかと言うと、「患者さんを呼び込む前」「患 者さんが身繕いする間」「患者さんが診療室から出た後」にメモを 元に行います。婦人科の場合、脱ぎ着する時間(こちらが待たねば ならない)という事情もあるでしょうね。
私の電子カルテ WINE は、結構盛業の開業の眼科の先生も使われ ていますが、そのあたりのクレームはないので問題ないようです。

>り、手を動かすのは小脳の仕事である。手書きではたとえ字を書 いていたとしても思考を続けることが出来るが、ワープロでは変 換のたびに思考を寸断され思考がまとまらなくなると考えられる。

一定以上の量・可変の情報入力において、現在の最良の入力装置 は、やはりキーボードと思いますが、これだけで一から十までやる のは無理があると考えています(私はかなりキーボード大好き人間 ではありますが)。

>医師の頭はパソコンと違いCPUを高速化することも、メモリー を増やすことも容易ではないが、ソフトを軽くすることは可能と 考えられる。
...
>係の変化などが予想される。これらの望ましからざる変化を防ぐ ためには、診療録の全文電子化を断念し部分的電子化にとどめる ことが望ましいと考えられた。

そこで、ワープロ入力による「自由な表現」「柔軟な対応」を生 かしつつ、ドクター毎の癖を学習した辞書やメニューのクリックな どを活用することにより、この論文で書かれた問題点のほぼ全てを クリアできると考えています。特にテンプレートのようなものを活 用し、一括入力することが能率化に大きく貢献します。

# 最近メンテが滞っていますが、以下の私の Web に私の関連文献を公開しています。ご興味のある方はどうぞ。

何をしてもらえるかより、何ができるかに楽しみを、、、 Internet: ohashi@ocean.linc.or.jp
http://www.ocean.linc.or.jp/

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3 INET GATE INS00103 98/03/03 09:33
題名:Re: Re: 14回耳鼻科情報処理研究会見聞録
Date: Tue, 3 Mar 98 09:33:12 +0900
From: Katsuhiro OHASHI <ohashi@ocean.linc.or.jp>
To: 坂部 長正 <PEC01137@niftyserve.or.jp>
Cc: Katsuhiro OHASHI <ohashi@ocean.linc.or.jp>

大橋です

Mon, 02 Mar 1998, 坂部 長正 wrote:
>早速のリプライ感謝します.内容が非常に興味あり特にアップし ましたが、シーガイアのグループには転送していません.テンプ レートは耳鼻科の診療のすべてには当てはまらず無理に当てはめれば 項目数が多くなり探すよりも入力した方が早いと言う問題も生じます。 耳鼻科ではテンプレートを強く言わない理由がそれです.

そうなんですか、、、どこの科でもある程度のパターン化 されたものはあると考えていたのですが、、、

>また、一般に書かない、読まない、使わないと言われるカルテを 入力して何のメリットがあるかという意見もあります.
確かに、耳鼻科や眼科は立った作業が多いですし、どんどん患者 さんをさばかなければいけないので、カルテに記述していられない という状況はわかりますが、電子カルテだからこそ、そのような環境でも使えるのだと思っています。
そういう意味で、耳鼻科では身体に装着したコンピュータ(の入 出力端末)の方がよいのかも知れませんね。

>先生のリプライを川合先生に転送して良いでしょうか.坂部

ええ、どうぞ、どうぞ、、、

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4 INET GATE INP00100 98/03/04 08:15
題名:RE: 14回耳鼻科情報処理研究会見聞録
Date: Wed, 4 Mar 1998 08:12:59 +0900
From: "kawai masakazu"<kawaidr@jan.ne.jp>
To: "Katsuhiro OHASHI"<ohashi@ocean.linc.or.jp>, "坂部 長正"<PEC01137@niftyserve.or.jp >

 川合です。「キーボード入力による診療録全文電子化の試み」を耳鼻科情報処理研 究会見聞録に載せていただいた上、電子カルテの大先輩、大橋先生よりご意見いただ いてたいへん光栄に思っています。
 諸先輩方と違い私の場合、診療録全文電子化をやめてもらうため電子カルテ研究を 始めたので、意見が気に障るかと思いますがご容赦下さい。電子カルテ関係の情報を 研してきて思ったのですが、個人医院用の電子カルテと総合病院用の電子カルテがは もっと区別して語られるべきかと思います。  個人医院と総合病院の電子カルテの差を列挙していきます。  個人医院では電子カルテの優越性を信じる人間が開発を指揮し実際に使用するわけ ですから、ハードルが高くても工夫を重ねる意欲があります。総合病院では指揮する 人間は別にいて、多くの医師はただやらされるわけですからハードルが高いとやる気が なくなります。
 個人医院では医師がよいと思えばそれでOKですが、総合病院ではみんなの意見が そろわなければ工夫も先には進めません。
 個人医院ではダメだと思う部門は電子化しなくよいのに対し、総合病院では集団の 意志で電子化が強制されます。診療録電子化が向かない科にとっては悪夢です。た とえば精神科の場合、分裂病患者は電波系の妄想に陥りやすく、医師がコンピュー ターに向かってカルテなど書こうものなら、分裂病患者は自分の考えをコンピューター に報告された上、世界中に発信されている、あの医師は敵だ、等とんでもない妄想を抱 かせる原因になります。
 個人病院では人事移動を考えなくて良いのに対し、総合病院では人事移動した医者 がすぐ使えるシステムである必要があります。何よりも総合病院には後輩を育てると いう使命があります。後輩が育つような環境をつくる責任が総合病院の医師には要求 されていると思います。後輩を育てるのに思いつくのは自分の新人時代の勉強の仕方 です。アナクロと言われても紙しか思いつきません(徐々に変化すると思いますが)。
 医療とは本来医師と患者が個人として向き合い、それをサポートするためにシステ ムが作られていったものと考えています。個人医院が医師個人の嗜好に合わせてシス テムが構築されるのに対し、総合病院のシステムは多様な医師の嗜好を受け入れるべ く緩やかでありながらしっかりした枠組みとして構築される必要があります。緩やか でありながらしっかりしたシステムという注文は難易度の高い注文だと思います。
 今回の置賜病院完全電子化構想で困ったのはイメージ入力では検索ができないと 言っても理解してくれないような役人がプロジェクトを主導していたことです。一年 間かけて総合病院での診療録全文電子化のノウハウは確立していないことを理 解していただき、開院時の診療録全文電子化はなくなりました。ほっとしています。  「前人未踏の山に登るなら少数精鋭に決まっている。集団を率いて登るならルート が確立してからだ。」これが現段階での集団の案内役としての私の電子カルテに対す る意見の集約です。
追伸 精鋭の皆様がルートを作ってくださるのを期待しながら待っております。

      南陽市立総合病院耳鼻科 川合正和   TEL&Fax0238-50-0144,  kawaidr@jan.ne.jp

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川合先生
興味有る発言拝見しました.先生のご意見に賛成です.私も数年前までオーダリングを開発し軌道に乗せて大学に来ました。一晩で官立から民間病院に変貌し、システムを導入して生き延びるか現行のままでつぶれるかの瀬戸際の恐怖を経験しています.反対する医師や職員をクビにしました.
結果は良かったのですが、順調に稼働するまで数年間殆ど徹夜の毎日でした。電子カルテは一部の親方日の丸の大学病院や趣味の開業医でうまく行ったという評価では両者が噛み合わないのは当然です。研究レベルでは勿論これでよいのですが、最近の傾向は大げさに言えばいかにもこれで電子カルテが浸透すると言う方向に進み始めたのに危惧の念を強く抱いています。私は昨年6月に神戸で開催した電子カルテシンポ97の会長だったので、強く批判の発言が出来なかったことを申し訳なく思っています。立場上ではありましたが。大橋先生との討論の結果を教えて頂ければ阿部幹事からも申し出がありましたので耳鼻科研究会HPに掲載したいと思います.また、5月末のシーガイアでの電子カルテ研究会案内速報も届いていますので、近日MLでお知らせします.ご健闘を祈ります.坂部

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1 INET GATE INP00101 98/03/12 23:46
題名:送付します。
Date: Thu, 12 Mar 1998 22:16:32 +0900
From: "kawai masakazu"<kawaidr@jan.ne.jp>
To: "坂部 長正"<PEC01137@niftyserve.or.jp>

川合です。いろんなご意見ありがとうございました。メイルの引用を繰り返す文体で書くのにまだ馴染めませんので、長いメイルになるのをご容赦下さい。

論旨1 電子カルテは目的ではなく手段である
 病んでいる患者にとっては明日の医療より今日の医療です。現場の殆どの人間は今日の患者をおろそかにしてまで明日の電子カルテために頑張ろうとは思いません。電子カルテが医者の足を引っ張らないレベルに完成すれば、現場の方から使わせてくれといいます。患者を前にしてやる気のない医者は唾してもらって結構ですが、電子カルテにやる気のない医者を非難するのは避けた方が無難です。電子カルテが役に立つと判れば現場はトレーニングの労を惜しみません。総合病院の電子カルテを語る場合、開発と現場はお互いの気質の差を飲み込むぐらいの了見が必要です。
論旨2 現場の意見と推進者の意見の開きが大きい
現場にとって、コンピューターへの入出力は紙ほど楽ではありません(後述)。電子カルテの利点として主張される臨床統計によるフィードバック、外部とのリンクによる情報交換・文献検索、診療支援等は現場の医師にとっては利点として感じられません。なくてはならない利便性(使いやすさ)を切り捨てて、なくても困っていない機能を付けてもらっても現場では喜びません。置賜病院電子カルテ化構想ではこの辺の議論は一回もさせてもらえませんでした。行政は上がやると決めたらあとはノンストップです。だから研究者同士の間で今の内に議論しておくことは重要だと思います。
論旨3 理想の電子カルテの実体はいまは見えていない
 医療というのは医師と患者が向き合うところから始まります。ところが個人医院以外の電子カルテでは医師がどんな格好をしているのか、紙はあるのか、ボールペンを持っているのか、タブレット用のペンを持っているのか、キーボードとにらめっこしているのか、患者と目線を合わしているのか、このスタートの絵が見えてきません。この場面をしっかり抑えられないうちは、どんなに議論が白熱しても電子カルテの準備段階(インフラ)であって完成型ではありません。この点で言えば一応の完成を見ている個人医での電子カルテの方が評価できます。
論旨4 臨床の現場で使える入力装置がない
 これについては大橋先生のキーボード主体で、患者と対面中は紙にメモ書きし、切れ間に電子カルテに書くというのがもっとも現実的な回答見本かと思います。この方法の欠点は大橋先生に出来ても私には出来そうにないと言う点です。工夫を重ねれば出来るかも知れませんが、その労力は別なことに向けたいので私には向きません。
 私の場合、キーボード入力で実験的に外来診療をやる前に、タブレット、テンプレートとも基礎実験を行っています。両者とも基礎実験のレベルで駄目と判定されました。以下は方法と結果です。
◎ タブレット(ザウルス)での実験1:手書き文字をイメージ入力した場合を想定 (方法)ペンでタブレットに字を書いて読みやすい字の大きさを調べる。 (結果)太字12mm角が読みやすい。9mm角だと潰れて読めない字が出てくる。 (考察)こんなでかい字でカルテを書いたんでは仕事にならん。取り込み精度が今の 72dpiから250dpiにでもなれば少しは使えると思うが。
◎ タブレットでの実験2:現場スタッフの字のテキスト変換正解率 (方法)タブレットに手書きしテキストへの変換正解率を見る。(結果)変換成功率は6人の平均で68%(48-98%)、正解率のもっとも良かったのは院内で文字が丹念で有名な事務員。(考察)使えません。
◎タブレットでの実験3:テキスト変換可能な文字を書く労力の検討 (方法)1分間に何字、正しい字を書けるか調査(結果)手書きでは一分間に50字書けたのにタブレットで変換されるきれいな字を書くと20字で限界。(考察)人間に読みやすい字を書くことより、機械に読みやすい字を書くのは難しい。コンピューターが文脈を読んでテキスト変換できるようにならない限り使えない。(これらの結果は現在医療情報学会誌に投稿済み)
◎ テンプレートを用いた診療録電子化:(方法)患者の訴えを想定し、それを記載しうるテンプレート形式を作成し、入力に要する時間等を測定する。(結果)始めた途端に挫折。(考察)「4,5年前手術してから何となく右肘のあたりがだるい」これだけでさえも書けない。「4,5年」は「4,5年」であって「4年」でも「5年」でもない。いちいちキーボードを叩くのか。書くのは良いが、後で集計するときどう扱うのか。「手術してから、、、だるい」というのはだるさと手術とを患者が結びつけて考えているという情報を含んでいる。テンプレートでは因果関係を表す助詞が使えないため「手術を受けた」「だるい」という情報の並列になってしまう。因果関係は臨床では極めて重要な情報であり、無視すればトラブルの原因になるのは明らかである。その他「なんとなく」「右肘のあたり」といったあいまいな表現をどのように取り込むのか不明。  テンプレート方式ではテンプレートに合わせて患者を診ることは出来ても、患者に合わせてテンプレートを造ることはほぼ不可能。そんなことをしたらテンプレートの項目の数は際限なくなってしまう。テンプレート方式は選択肢が多くなれば選択のために時間がかかり、少なければ患者をまともに診れない。結局はキーボードで補足するしかないが、それなら全文キーボードでやった法が楽。時系列を抜きにした並列情報て゜あれば得意だと思うし(たとえば現症とか)、これらの情報の電子化に際し紙のカルテと移用して使う文には何ら問題ないと思います。(論文化予定あり)。
 例文「三日前より風邪をひいて喉が痛い。摂食不可。飲水可。喉が痛くなった頃から右耳も痛くなってきた。兄が扁桃腺手術受けており、先生のところで手術してもらったらと勧めた。」これを手早く(手書きの3倍以内の時間で入力可能なこと)書けるテンプレートがありましたら是非教えて下さい。この話を同僚にしたらもっとひどい例文を出題されました。「三日前より風邪をひいてのどが痛かったが、今はのどは痛くないが咳がひどい」。こんな会話が連発するのが臨床です。私はギブアップです。
◎各種入力法の併用 (考察)切れない包丁を何本集めても、切れる包丁一本の代わりは出来ません。使えない方法を組み合わせて使えるようになると思う発想は無理があると思います。
論旨6  出力装置(ディスプレイ装置)が見づらい
今回はメールをたくさんいただいた結果、ディスプレイでは文脈がわからず紙に印字してからご返事書いてます。メール2,3通だけでディスプレイ画面では処理できないのに、一人の患者の全貌を捉えるなどディスプレイではとうていできません。紙に印字するのであれば、最初から紙に書いて紙で読んだ方が合理的です。また携帯端末に情報を詰め込めば全ての情報を持ち歩けると便利という説もありますが、携帯端末の小さい画面で患者を捉えきれるのでしょうか。議論の前に現実が先を行くようで恐れています。どう情報を捉えやすくするか工夫のしがいのある部門であり、電子カルテの実装を考えるのはこの部門のノウハウがもっと進歩してからであるべきと考え ます。
結び  長々とした文章読んでいただきありがとうございました。

  川合正和  電話・ファックス0238−50−0144 kawaidr@jan.ne.jp

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INET GATE INR00102 1998/03/14 11:41
題名:RE: 了解.シーガイア行きますか?是非行か
Date: Sat, 14 Mar 1998 10:12:05 +0900
From: "kawai masakazu"<kawaidr@jan.ne.jp>
To: "坂部 長正"<PEC01137@niftyserve.or.jp>

シーガイア是非行かせていただきます。日程は発表がアクセプトされてから決めます。
 小論文お誉めいただきありがとうございます。皆様のメールを読んで思うに、情報系の方たちには臨床医が余りにファジーに医療を行うことに不満があるようですが、患者(=人間)という存在自体がファジーなのですから仕方ありません。デジタルに患者をとらえられると言う発想自体が誤りです。それは患者と直接接触していない人間の発想です。阿南先生の手紙はコンピューター大好きの医者と医療情報室系の考え方の違いを示していておもしろく読ませていただきました。医者としては便利システムの個人病院の電子カルテの方が好きです。やはり医療情報室の考えるシステムより血が通っているようだからです。
 見ざる言わざる聞かざるの県の役人に議論一つさせてもらえなかった日々に比べ、なんとすてきな日々だと感謝しております。

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このページのメールに表明されている意見は、メールの発信者各個人の意見であり、耳鼻咽喉科情報処理研究会を代表するものではありません。

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