TEPRA99報告


1999年4月9日改訂

TEPRA99に参加しました。耳鼻科MLに報告をと坂部先生から声をかけていただいたのでまとめます。

場所は関西国際空港の手前にあるりんくうタウンの国際会議場です。全日空ホテルのあるタワービル6階はとてもきれいな会場でメインホールに同時通訳設備が準備されていました。私は5月の糖尿病学会総会でインターネットと糖尿病というワークショップに話をさせていただくことになったため、最近情報収集できゅうきゅうとしています(当院以上にされている方から質問をされた時『それは全く知りません。』と立ちんぼになることだけは避けたいので、、、避けがたいかもしれませんが)。そのような訳からの今回の参加です。

昨年5月のシーガイアミーティングでこのTEPRA99のご案内をいただいていましたが、すでに出張枠の1週間を越えているためギリギリまで迷ったすえ休日のみの参加をきめました。TEPRAとはToward an Electronic Patient Record Asia 99の略です。

アメリカからの4人のご講演者の他、韓国からおひとりがそれぞれ基調講演をされ、うち2人のアメリカ人と韓国の先生は里村医療情報学会会長と共にパネルディスカッションにも立たれました。又厚生省健康政策局医療技術情報推進室長の松本義幸先生の電子保存に関するご報告(13日)があり、他にも日本の先生方のご発表が12日朝から夕までありました。12日は一旦山口に戻って出席できませんでしたので基調講演と厚生省、それにパネルディスカッションの報告になりますが、私が聞かせていただいたご講演は本当に素晴らしいものでした。医療情報の常識に明るいわけではないので肝をはずしているかもしれませんが、私の印象から以下演題名とワンポイントを列挙します。

0) チュートリアル2(1はHIPAAについてですが私はこれを選択しまた)
武田教授+中島和江先生(阪大)
遅刻しての参加でしたが前半の日本の現状の紹介を武田先生がされたあと、後半中島先生が来週月曜に発表される国立大学病院における診療情報の提供に関するガイドラインについて日本医師会のガイドライン(中間報告)と米国事情の紹介を含めてされました。アメリカでは日本のような本人からの請求より保険会社からの閲覧数がものすごく多いようで、プライバシー保護については問題があるです。

1) Health information technology -Inproving the cost and the quality of care
Michael Fitzmaurice(ヘルスケア政策研究機構 AHCPR、米国)
ヒラリークリントンさんの諮問委員会にも参加されている方です。まず米国の医療費の占める割合や保険未加入者の紹介などがあり、電子的請求書とプライバシー保護を柱とするHIPAA-Aについて話されました。50州のうち34州にプライバシー保護法があるなど州毎の違いに対して連邦政府がシーリングを作るとかデジタル署名整備の必要性などが指摘されました。

2) EPR system in the United States:America's mistake - Asia's gain
Ralph Korpman (Health Data Sciences Corp.)
この方はLoma Linda Univの教授であるとともにMedaphis and Per-Se Technoligiesという企業のChief Scientistでもあります。バラバラなカルテの山を写真で紹介され医者や看護婦が医療業務以外のことに時間を割かれすぎていることを指摘、一般産業が7-14%を情報にかけていることと比較して1-2%というHealthcareはもっと情報にお金をかけるべきだと展開をされました。あとで同社の電子カルテの紹介もされましたが私からみると画面がきれいすぎる反面個々のレイアウトは実際的ではなくまだ充分実働していない感じでした。

3) Electronic patient record in Korea
Taiwoo Yoo (Department of Family Medicine, Seoul National University)
たいへん魅力あるきれいな英語での発表でした。韓国は1989年国民皆保険開始にて出来高払いのようです。専門医家庭医の差はなく1日70-80人の患者を診なければいけないなど3−3−3診療とまさに日本に良く似た状況です。医師増加にてコンピューターが扱える若い医者が開業し、保険請求の煩雑さからほとんどコンピューターを持っていること、そしてレセプトコンピューターシステムがわずかな追加料金で電子カルテシステムにヴァージョンアップされ、開業医の中では電子カルテがすでにずいぶん普及されているとのことです。一方病院システムの中での電子カルテは2000床のSamsungと4000床のHyundaiという新しい2大病院だけの実現で、このYoo先生が政府のバックアップを得て研究中とのことでした。web-baseでのセキュリティー問題認識も低いとのこと、あと10年は電子保存は難しいと言われていました。

4) The inportance of electronic patient records and international harmonization effects
Peter Waegemann(電子カルテ研究所、米国)
まず第一世代の電子カルテは互換性のない施設独自のもの、そこに第二世代として、HL7やDICOM規格が決まり、そこにISOTC215なども入って現在はwebbaseの第三世代にあるとの説明でした。現在インターネット上の情報の43%がHealthcareに関することだとも言われていました。患者情報の22-38%は必要とされた時閲覧できていないという数字を挙げられ、医療者間における患者情報共有の必要性ともあわせて電子カルテが期待されると述べられましたが、この先生のご講演は少し時間延長となり、山口へ一旦戻る汽車の時間から中途退出しました。

5) Promotion for EPR development in Japan
松本義幸(厚生省健康政策局医療技術情報推進室長)
標準化への今までの経緯の紹介と共に電子媒体への保存を認める方向性についてのご紹介をされました。ただそれに向かうための必要用件として保存義務書類の真正性の確保と作成責任所在の明確化、保存義務書類の肉眼での閲覧可の確保と復元可の確保、そしてプライバシー保護の確保などが列挙されガイドラインを作成中とのことでした。

6) Master patient index for a massively distributed medincal records system across a national backbone in the United States
Joe Kessel (Sequoia Corp., USA)
現在ばらばらになっている情報をXMLフォーマットへ変換しインターネット技術での利用可にすることで簡単に拡張したり1点に集めたりできるようにすることの重要性を指摘されました。MMLやHL7も次期ヴァージョンはXMLに対応するとのことですね。わたしも対応中です。

[パネル討論] "グローバル電子カルテの実現に向けて"

まず座長の武田教授から国立大学病院におけるアンケート調査結果報告があり、その中から浮かび上がってきた入力の問題、アクセス権の範囲、データ修正可否についてディスカッションが順に開始されました。
入力については音声入力はアメリカでもまだ現実的ではないとのこと、里村先生がシーガイアMLにおける川合先生が提起されたディスカッションをていねいに説明され、日本語変換がさらに加わっていることからのキーボード入力問題の大きさを提起、武田先生がそのメールやりとりは自分も読んだと受けてマイクロソフトなどに医療における入力についての新しい技術革新を依頼しなければいけないのではないかと提案がありました。会場からアメリカにおける医師口述下タイプ入力の問題点と医師自身によるキーワードに限定した入力の可能性について質問がありましたが、テンプレートでは微妙な表現ができないとのFitzmaurice先生の答えでした。
データアクセス権については保護する技術はあるが、誰に限るか国や警察も可能かなどのガイドライン作成への議論が必要とのことでした。会場から厚生省松本先生より前述の国立大学病院情報開示ガイドライン検討についてのご報告もありました。
データ修正については時間がなくなって余り議論ができませんでしたが、Waegemann先生からまずsecurityには医師のサイン後数時間で修正不可とすること、変更したらそのことがわかるようにすること、そしてデータの保存が確保されること(つまりハードディスクだけではクラッシュする可能性があり問題とのことでした)が必要と提示され、Fitzmaurice先生からは10円のデータ確保に1000万円かけて守ることはできないからそのような経済的観点も考慮されなければいけないとの追加がありました。里村先生からもお金がかかりすぎたら使われなくなるかも知れない危険性について指摘がありました。
最後に井上大阪国立病院長の閉会宣言のあと、米国のどなたかがおっしゃった閉会挨拶追加は、同時通訳のイヤホーンをはずしたあとだったので100%はわからなかったものの心をうつものでした。人はただ生きているのではない。生きがい、目標を持って生きていくということを考えたら、これから先もこの電子カルテの仕事をしていくことは困難が多いかもしれないが、患者のために又自分のためにもよりよい未来のためにあなた自身が頑張ってくださいというような意味だったと思います。終わってからはじめてご挨拶できた尊敬する里村会長先生ともそのようなお話ができて心満たされて帰りました。(午後1時からりんくう総合メディカルセンターへ病院見学がありましたが、放射線科の画像転送デモを一部拝見しただけで興味のあったICUについては博多での出身研究室の会合に間に合うための汽車の時間から参加できませんでした)。

以上雰囲気をお伝えするだけで不充分と思います。すみません。私の勘違いもあるかもしれずこれは耳鼻科MLだけとさせていただき、一部も含めて転載はお許し下さい。

_/_/_/_/_/山口赤十字病院内科_/_/_/_/_/ _/_/_/_/_/_/古賀 龍彦_/_/_/_/_/_/_/_ _/_/tatskoga@yamaguchi.med.or.jp_/_/


事務局より:以上のメールは古賀先生のご承諾を頂いてホームページに転載させていただいています。

このページのメールに表明されている意見は、メールの発信者各個人の意見であり、耳鼻咽喉科情報処理研究会を代表するものではありません。