CD-ROMの作り方


第17回医療情報学連合大会
チュートリアル 1-D-2
1997年11月25日 13:30〜15:50
D会場
 
耳鼻咽喉科情報処理研究会
阿部和也
東京大学医学部附属病院分院耳鼻咽喉科

1.はじめに

近年CD-Rライタの低価格化に伴い、個人で簡単にCD-ROMが作成できるようになった。また、CD-ROMのプレス費用もかなり安くなり、CD-ROMでの「電子出版」は、紙での出版に比べ、コスト的に大幅に有利である。カラー画像や動画を含めることも可能で、医学関係の出版には最適である。
ここでは阿部が「耳鼻咽喉科情報処理研究会 編 電子テキスト 創刊号」を作成した経験から得られた、素材の処理からプレスまで、CD-ROM作成の全般にわたるコツを紹介する。

2.オーサリング

音・動画等を組み合せてマルチメディアタイトルを作成することをオーサリングauthoringという。

(1)ハードウエア

ハードウエア
本体(AV Mac)
メモリ多いほど良い
モニタ大きいほど良い
圧縮ボード動画では必須
高速・大容量HD2〜4GB(内蔵)
CD-Rライタあまり安いと…

(2)ソフトウエア
Macintosh、Windowsで共通して使用できるオーサリングソフトの代表的なものを下の表に挙げる。この他にもSuperCard、エキスパンドブックなどの形式がある。DirectorはMac版とWindows版を購入する必要がある。他は上記2者を含め、開発はMac上で行なう。

代表的なオーサリングソフト
製品名と開発会社再生開発
Macromedia Director 6.0J
Macromedia
Mac/Win*Mac/Win*
Oracle Media Objects 1.1J
Oracle
Mac/Win**Mac/Win**
GREEN 1.1Mac/WinMac

(3)オーサリングのコツ
●レイアウトは分かり易く、統一性を持たせる
クリック可能なものはすぐ分かるように周囲と区別し易いものにする。また、ボタンらしい色と形を選ぶ。大きすぎるボタンはかえって分かりにくいことがある。各ページのデザインを統一する。
●動画は長くしない
複数の短い動画を続けて再生することが可能なので、繋げて長い動画にする必然性がない。長い動画の途中の差し替えは面倒。

3.資料作成の実際

(1)音声
a.取り込み
できるだけ高音質でテープに録音し、事前にレベル調整しておく。取り込んだ後でも編集、修正はできるが、音質の低下を招く。
取り込み設定としては、解説、朗読などあまり高品質を要求されないものは22.05kHzまたは11.025kHz、8ビットでサンプリングし、音資料(病的音声のサンプル、心音、呼吸音など音自体が重要であるもの)として高品質が要求されるものはそれ以上、できれば44.1kHz、16ビットでサンプリングする。ステレオの必要製は少ない。

b.保存
Macintosh / Windows で共通に使うためには、ファイル名8文字とし、その後にピリオド(.)に続けて3文字の拡張子をつける。
文字は英数字のみを使用し、全て大文字とする。
保存形式はAIFF形式かQuickTime形式とする。AIFF形式は手軽に扱え、波形の状態で編集ができる(拡張子 .AIF)。QuickTime形式はユーザによる編集やコントロールが可能である(拡張子 .MOV)。

(2)動画
a.取り込み
Macintoshでは、AV Macと呼ばれる製品ならビデオ取り込み回路が搭載され、取り込みソフトウエアも附属している(取り込み機能が内蔵されていても、必ずしもAV Macと呼ばれていない)。DOS/V (Windows)環境では様々である。
アナログビデオ信号をAV Macで取り込む場合、転送されるデータ量が多いので、ハードディスクが追い付くのが難しく、JPEG圧縮ボード(DeskStudio、PowerVideo等)は必須と言って良い。取り込んだ画像をボードでリアルタイムに圧縮することにより転送量を大幅に減らすことができる(1秒あたり2〜2.5MB)。 デジタルビデオ信号を取り込む場合にはDV端子(IEEE1394、別名FireWire)付きのデジタルビデオカメラと同端子のある取り込み機器(ボード)を用意する必要がある。Macintoshの場合はPhotoDV、MotoDVというRadius製のセットがある。
DOS/V(Windows)環境では各種取り込みボードがあり、一般的に語るのは難しい。

b.保存(1)
取り込んだ画像を保存する場合、ハードディスクの速度と容量が問題となる。 アナログ信号の場合、320×240、15fpsで取り込んだとすると、JPEG圧縮後1分あたり10〜15MBとなる(音声の質にもよって変動する)。 デジタル信号の場合は1秒あたり3.5MBで固定である。これを落ちなしで取り込もうとすると、SCSI2などの高速インタフェースボード+高速ハードディスクか(ソフトウエア)RAIDの導入が必要となるのが普通である。

c.編集
Macintoshでは、バンドルソフトのMoviePlayer (ムービープレーヤ)で基本的なコピー・カット・ペーストが全て行なえる。編集ソフトでよく使われるのがAdobe Premier(Adobe、7〜8万)で機能が豊富である。Strata VideoShop(Strata、5〜6万、旧称 Avid VideoShop)はバンドルされていることが多い。以前はCinepak圧縮がPremierより高性能だったが、現在では大きな差はないようである。

d.保存(2) ―圧縮―
CD-ROMは読み出しが非常に遅いので、CD-ROMで動画を配布するためには動画を圧縮しなければならない。最も一般的なのがCinepak圧縮である。Cinepak圧縮は圧縮には非常に時間がかかるが、伸長が高速であるのが特徴である。320×240の画像を最高品質でフレーム数: 15フレーム/秒 、キーフレーム: 15フレーム毎、転送速度上限: 200KBytes/秒で圧縮している。ハードディスクからの再生であればJPEG圧縮でよい。また将来はMPEG圧縮が一般的になるかもしれない。 さらに、Macintoshで保存する場合は「平坦化して」保存する必要がある(2ページ右下図。MoviePlayerの画面)。 前述のファイル名の規則に従い(8+3、英数字、大文字)、拡張子は .MOVとする。

(3)静止画
a.取り込み
スキャナを使用して取り込むことになるが、音の取り込み同様、取り込み時に条件をできるだけ整え、取り込み後の調整はできるだけ少なくする。入力後の編集は基本的に画像を劣化させる。暗すぎる写真や明るすぎる写真は、スキャナの設定を調節してできる限り修正しておく。ただし、音の取り込みと異なり、技術さえあれば高度な修正が可能である。 良い写真とは見たい部分のコントラストが高い(情報量が多い)写真である。撮影の時点から取り込みを考えて撮影するとよい。

b.保存
保存した画像はオーサリングの時点でタイトルに取り込んでしまうので、オーサリングソフトが扱いやすい形式(一般にはPICTファイル形式)で保存しておく。また、画像の解像度はディスプレイの解像度(72dpi)とする。

(4)テキスト
a.取り込み
パソコンで作成したテキストを移行する場合、テキスト形式で保存しておくと扱いやすい。テキストもオーサリングの時点でタイトルに取り込んでしまうが、取り込み前に設定したフォントや字体は反映されない。 印刷物から取り込む場合は日本語文字認識ソフトの活用も有効だろう。

4.著作権について

(1)使用する素材の著作権
CD-ROM作成に際して、効果音、音楽、写真、バックグラウンドパタンなどに市販の素材を使用する場合、素材の著作権を確認することが重要である。2次使用を前提として市販されている「素材集」でも、使用して作成した物を個人使用するのか無料配布・有料配布するのかで扱いが異なるものもある。有料配布の場合のライセンス料を別に規定している場合もある。
広義に著作権と呼ばれる権利には大きく分けて著作者人格権と著作財産権(狭義の著作権)がある。著作人格権は著作した時点で自動的に生じ、著作者に固有のものであるが、著作の経済的な面を反映する著作財産権は他人に譲渡できる。依頼でビデオを作成したり記事を書いたりした場合、学会誌に投稿した論文など、自分が作成した(書いた)ものでも自分に著作(財産)権があるとは限らないので、既に公表したものは自力で公表したものを除き、公表に当たっての契約の確認が重要である。

(2)作成したCD-ROMの著作権
複数の作者が共同で著作する場合、全体の著作権、各部の著作権について明記した書類を作成するとよい。また、付属文書、CD-ROM盤面に著作権の表示をしておく。Copyright (c) の文字、発表年、著作者を明記し、以下のような形式となる。

Copyright (c) 1997 ENTIS Japan. All rights reserved.

5.CD-ROMの形式

CD-ROMのフォーマットには複数の形式がある。DOS/VやWindowsで読めるためにはISO9660という最もプリミティブな形式でなければならない。再三述べているファイル名の制約はここから来ている。Macintosh専用のCD-ROMであればHFSというMacに固有のフォーマットでよい。MacとWindows両者で使おうとするとハイブリッド形式と呼ばれる、CD-ROM内部を分割して両者の形式のデータを持たせるフォーマットにする必要がある。
ここで注意したいのがハイブリッド形式には「DOS/V + Mac」と「DOS/V + Mac + 共通領域」の2つの形式があるということである。前者では両方の形式に共通する動画や音声のデータでも二重に(別々に)持たなければならないので容量的に不利である。
株式会社ワイズコーポレーションのホームページ(http://www.yamaha-is.co.jp/)にCD-ROMについて詳しい記述があるので一読をお奨めする。

6.CD-Rの作成

CD-ROMの内容となるデータはでき上がりと同じもの(マスタ)をCD-Rで作成しプレス業者に渡す。CD-Rの作成を業者に依頼する場合は、こちらの意図が明確に、過不足なく伝わるよう、綿密な打ち合わせが必要である。以下にCD-Rを自分で作成する場合の注意点を述べる。また、CD-R(メディア、ライタ、ソフトウエア)に関する詳細な情報がhttp://plaza5.mbn.or.jp/~gam/にあるので興味のある方は参照されたい。

(1)メディア(盤)
最近は各メーカの技術が向上・安定してきているが、有名メーカの盤が良いとは限らない。評判を聞いてみる必要がある。

(2)CD-Rライタ
CD-Rにデータを書き込む機械をCD-Rライタと呼ぶ。様々な価格帯で様々な製品が出ているが、価格に相応の性能であると考えてよい。書き込み方式にはディスクアットワンスdisk at onceとトラックアットワンスtrack at onceがあるが、詳細には触れない。

(3)ライティング・ソフトウエア
CD-Rにデータを書き込むにはCD-Rライタ(ハードウエア)とライティング・ソフトが必要である。以前の業界標準はQuickTopixであったが、バージョンアップがなく、対応機種が少なくなっていることからシェアを落している。現在ではdisk at onceが書ける機械でAdaptec Toastを用いるのが主流ではないか。

参考:Adaptecのホームページ
   http://www.adaptec.co.jp/

7.CD-ROMのプレス

(1)入稿
CD-ROMの内容となるデータは先に述べたようにマスタを渡す「CD-R渡し」がベストである。その他の媒体を受け付けてくれる業者もあるが、その場合は別に費用がかかることがあるので確認が必要である。 盤面に印刷するデータの入稿方法もフィルム、紙焼版下、フロッピーと様々である。

(2)価格
マスタ製作を業者に依頼すると1.5〜2万円であると思う。マスタ製作を自分で行なった場合、プレス費用となるのは原盤製作費(12〜15万)、プレス代(枚数によって異なるが、数百枚プレスすれば1枚あたり200円以下)である。盤面印刷、ケース、包装(キャラメルと呼ぶ)は標準的なものであればプレス代に含まれることが多い。

8.参考文献

●CD-ROM制作の現場
 日置祥久/エーアイ出版/2,718円
 ISBN4-87193-447-0

●季刊・本とコンピュータ 第2号
 トランスアート/1,300円
 ISBN4-924956-52-X

●株式会社ワイズコーポレーション ホームページ
 http://www.yamaha-is.co.jp/

●「電子教科書」  阿部和也/JOHNS 12月号/東京医学社